橋本梓「ライトは内野と一緒」


 お昼の部を担当してくれたのは、橋本梓さんです。彼女は現在、国立国際美術館の研究員をしているチャーミングな女の子です(上記写真を参照のこと)。とはいえ、今回彼女にお話してもらったのは、美術についてではなくて、ソフトボールについてでした(「ライトは内野と一緒」というのは、ソフトボール部の監督の言葉で、要するに「ライトゴロを取れ!」という命令です)。おそらく彼女のキャリアの中で、ソフトボールについてレクチャーするのは今回が最初で最後ではないかと思います。その意味で今回のトークはとっても貴重でした(それを察してか、通常よりもお客さんの数が若干多かったような気がしました)。

 さてさて、今回橋本さんをお呼びしたのは、単純に僕のお友達だったからです。
 僕はいつの頃からか、友達と友達をつなげていく個人的なプロジェクトを実行してきました。たとえばお誕生日パーティにお互いに知らない人同士の僕の友人たちを同席させたりしてきました。
 社会人になると仕事関係の人ばかりと付き合うようになります。もちろんそれはそれで、刺激や有益な情報をもらえたりしますが、他方で同業者や類似業種の人ばかりと付き合うのなら視野が狭くなるかもしれません。なので、そんなプロジェクトをやっているのです(プロジェクトというと大げさですが、「遊び」に近いです)。
 で、今回も橋本さんに来てもらってボランティアさんとお話をしてもらえば、ひょっとすると新たな人間関係が広がるかもしれないし、あるいは友達にならなくても、国立国際美術館に行ったことがなかった人が美術館に立ち寄るようになるかもしれません。そんな淡い期待を抱き、橋本さんに来てもらったわけです(橋本さん、ありがとうございました。)いかがだったでしょうか?

 今回のギャラリートークの効果についてはさまざまな事柄が挙げられると思いますが、その中のひとつに「知らなかった人に出会う」という点があるでしょう。アメリカに20年住んでいた方、書道の先生をされている方、ご自身ではうだつの上がらない男だと思っている方、寺の娘などなど、今回のギャラリートークではさまざまな人にお話ししてもらっています。知らなかった人に出会ったり、あるいは、知っている人のこれまで知らなかったの側面を発見出来るのなら(そしてさらには、知らなかった人と新たに友達になれたりするのなら)、それはきっと素敵なことだろうなと思います。

 出会いが大切とか一期一会とか言うとつまらないお説教のように思えますし、実際には個々人が有益だと思える出会いなんてごくまれにしか起こらないのかもしれません。でも、たとえそうであっても、やっぱり誰かと知り合いになったり、友達になったりすることは素敵なことであって、そこへと至るための回路として普段は会わないような人とおしゃべりしたり空間を共有したりすることは大切ではないか、なんて、今回の展覧会がはじまってからぼんやりと考えています。

 なんだか変な結論になってしまいました。正直、こういうことを言語化するのはとても難しいです。結論自体、斬新ではない、むしろ極めて平凡だと言って良いものなので、どう書いても紋切り型になってしまいます。